常田大希という天才「king gnuはJ-POP」
- 2020.01.24
- MUSIC
音域を無視したメロディーライン、バンドの枠を超えたアレンジサウンド、一言で「わかりにくい音楽」
1、ドラマタイアップ、しかし配信リリース
まずこの曲は、坂口健太郎主演のドラマのタイアップだったこと。
冤罪を暴く弁護士のドラマで、歌詞の内容や曲の雰囲気もバッチリマッチした、
ボーカルの井口の繊細な歌声から始まるこの曲。
たしかに、バッチリではあるが、
「king gnuの白日」が世に知れ渡るスピードはもっとゆっくりで、
半年以上の時間をかけてゆっくりと日本中に響き渡った。
CDリリースをしないと割り切ったリリースの仕方は、
時代の風刺も感じられる。
私自身、この曲を聞いてから、じっくりと聞くまでにそれだけの時間がかかった。
有線やラジオで延々と流れるこの曲に、
違和感を感じるまでには時間がかかった。
2018年、米津玄師、あいみょんの台頭で、
それまでとは比較的、音域が低いアーティストの音楽がムーブメントになった。
「カラオケで歌えない」高音域ボーカリストが00〜10年代を席巻する中、
低音を響かすアーティストがこれから伸びる期待がされる2019年
すべてを裏切るかのように、男女問わず音域を無視したツインボーカルの極み。
声楽出身の井口ならではのこの高音域を最大限に駆使した、「白日」
ピアノとパーカッションのシンプルなAメロから軽快なリズムのBメロへと
このハモリまた秀逸
Bメロでツインボーカルの2本のオクターブでハモリ、
サビで1回し目で3本のオクターブハモ2回し目で最低音のメロを1度として、1、3、5、8度の4声でハモる
シンプルなのに、複雑に聴こえてなお、美しいハーモニーと化す。
リズムは跳ねて、メロディーは動き回る。
バラードのように見えて、バラードに収まりきらないその音楽性は、
唯一無二と言って過言ではない。
2、「king gnuはJーPOP」と語る常田の言葉
ロックバンドはなにかとカテゴライズされるのを嫌う。
今に始まったことではなく、それは昔からずっとだ。
しかし、棚を分けた時、どこに並べるか、
この音楽は、こういう音楽ですと説明したいのが人の常。
そのパラドックスの中で、バンド側はよく、
俺たちはロックだとか、パンクだとか、
自分たちのジャンルにこだわりをもちがち。
しかしどうだろう、「JーPOPだ」と言い切ってしまうのは、
これがロックかどうかだなんてジャンルわけの小さな場所で何かを言うわけではなく、
「一般的な日本の音楽」という壮大なカテゴリーにしてしまっている。
つまり常田にとって、king gnuは日本全国へ伝わる音楽だということ。
みんなに聞いてもらえる音楽として、このバンドを位置付けている。
ここまで複雑かつテクニカルなことをしておいて、
シンプルにJーPOPだと言ってしまう。
その言葉の裏には、きっと何もない。
シンプルな気持ちで、たくさんの人に聞いてもらえる音楽。
彼のJーPOPとは、きっとそういう意味なのだろう。
あるインタビューで彼は笑いながらこう続けた
「(白日は)難しすぎた!次はもっと簡単な曲で、売れる曲作りますよ!」
難しすぎた。
その言葉が、伝わるスピードの遅さの所以かもしれない。
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3、広がるking gnuの音楽
こんな難しい音楽ながら、一気に伝わった理由。
フェスへの積極的な参加で、ライブファン、フェスファンにも一気に知れ渡ったこと。
ライブでは、音源の完成度とはまた違う、メンバーのパフォーマンスが味わえる。
個の存在感が独立するその演奏は、音だけでなく魅せる。
ドラムの叩きざまは特に圧巻。あの細い体から迫力を見せつける。
ミュージックビデオの演出も極まれる。
全編モノクロの演出は、曲のシリアスさを高め、
鬼気迫る演奏が、独特の緊張感と美しさを演出する。
YouTubeでの再生回数、はグンと伸びる。
彼らを世に知らしめるツールは、ネットにも足を忍ばせる。
これもフリーランスの身内のチームだって言うのだから驚きだ。
仲間内で作るからこそ、妥協が生まれたりして完成度が悪くなりがちなところが、
一切ない。意識の高いチームでしかこの完成度は味わえない。
なぜかカラオケランキングの常連に。
誰が歌えるというこのメロディを、なぜかみながこぞって歌い出した。
「こんな歌歌えたらかっこいいな」なのか、
単純に好きだからなのか、
原因こそ曖昧なだけに、歌われて、結果に残ることがすさまじい。
「ヌーの群れのように、大衆を引き連れて飛びたい」
そう願いを込めてつけたバンド名。
これからも圧倒的な実力で、大衆を巻き込んでいくに違いない。
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