ひとモノガタリ、2020年2月未だ語られ愛される志村正彦

2020年2月11日NHKで放送された番組「ひとモノガタリ『若者のすべて~失われた世代のあなたへ』」そのテーマとなったのは、今は亡き、元フジファブリックのボーカル志村の曲を支えに今を生きる人たち。令和となった今、それでもまだ志村は求められる。

1、ロックバンド「フジファブリック」

2000年代から活躍し、日本の音楽史にその名を刻むロックバンド。
シングル「若者のすべて」は、夏の終わりを青春の短さやあっけなさに例え、抽象的にふんわりと若者を捉えた、フジファブリックの名作。
2010年代の若手ミュージシャンに影響を与えたアーティストと問われてフジファブリックと答える人たちは少なくないことだろう。それほどまでに、フジファブリックが作ってきた音楽は、バンドマンを巻き込みバンドマンに愛されてきた。

2020年今でもなお、フジファブリックは3人編成となり活動を続けている。
2009年、志村急逝。
それまで、バンドの真ん中にいた男、ボーカル志村。
結成から、幾度ものメンバーチェンジを繰り返し、
志村なき今も現役活躍中のフジファブリック。
フジファブリックの歴史は、2020年となった今、志村がいた時間よりも、志村がいないフジファブリックの方が長くなった。

現ボーカル山内と、旧ボーカル志村を比較するなんてバカな真似はしない。
その名を変えず、フジファブリックを背負い、10年超の時間を生きてきた彼らの心臓は偉大で、愛を思う。

結成何年、デビュー何年といったアニバーサリーによくもちいられる企画物のディスクの特典には、
今でもまだ、志村の映像が収録されたりする。
歳を重ねるごとに、それを見る私は、なにを思えばいいのだろう。

止まったはずの彼の時間は、彼自身の知らない場所で、動かし続けられる。

今日もまだ志村が求められる。

2、「ひとモノガタリ『若者のすべて~失われた世代のあなたへ~』」のレビュー

初期メンバーや、志村の歌に今日も励まされるというファンに取材をして、志村に対する思い、そして今自分がなにを思い生きるのか。志村ボーカルのフジファブリックの曲と歌詞を織り交ぜながら送られる30分間。

私は番組を見始める前、疑問に思った

ーなぜ、今、志村なんだ?

メディアに隠れて、今日も私のプレイリストに残り続けるフジファブリックは今日も志村が歌い続けている。
私たちは、今日も静かに志村の声を音楽を、相も変わらず聞いている。相も変わらず口ずさむ。

それをメディアが取り上げる。その裏側に見えるビジネスやトレンド、マーケティングが嫌いだ。
なにかと山内ボーカルのフジファブリックがテレビ出演するとなれば、志村の映像を流したりするのもよくは思えない。

なぜ、今、NHKが志村を番組にするのか?

見終わったときに感じたのは

ーこれを作ろうとした人がいる。ということ。

番組の向こう側に、志村を今、撮りたいと、
志村の向こう側にいる人たち越しに、
今の志村を撮ろうとした人がいたこと。

そこに映る元メンバーやファンは、
想像できる志村への思いを述べるだけだ。

あーこうまでしても、志村で何かを作りたい、届けたいなんてことがあるのか。

きっとたった一人。
二人、いやもっとたくさんいるのかもしれない。

それを撮って、映したいと思った人は紛れもなく、

フジファブリックを志村を愛した、自分だった。

誰かのきっと小さな思い。
彼が今日の日も続くことへの祈り。

目蓋閉じて、浮かべているよ。