あひるの空は休載する。早く続きを読みたい、でも終わって欲しくない。

あひるの空は、頻繁に作者体調不良で休載する。不謹慎かも知れないが、毎週のマガジンの目次でそれを確認してほっとしている自分がいたりする。

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1、作者、日向武史

いち漫画作家とは思えないほどの思想が強い人間である。
あひるファンなら誰でも知っていることだろう。
キャラクターを通して、様々な人間が抱える闇を表現する。
あひるの空はそもそもただのバスケ漫画ではない。

コミックスの作者後書きでは、たびたび彼の人間性を垣間見ることができた。
彼の漫画で表現したい世界は、
ダンクをいかに激しく派手に描くかじゃない。
そうしたほうが少年漫画では確実に人気がでることは明らか。だがそうじゃない。
彼が描きたい世界は、
シュートが放たれたあと、ボールがリングにあたらず、ネットを潜るあの瞬間の音。
想像はできるかもしれない。あの「バサッ」という音。
だがもう少し奥行きがある。
時が止まったかのように、無音の音がなるあの瞬間。あの間。あの映像でさえ、ライブでさえなんとも言えないあの瞬間を、漫画の世界で表現しようとする。それが日向武史という人間だ。
なかなか理解されなかったそうだ。そりゃそうだ。
それが、週刊連載の漫画雑誌では至極伝わりにくい。
求められるものがなんなのか、そこにシュートを打って、決めにいくんじゃない。
彼は、誰も打てないスリーポイントを、読者に打ち続けている。

2、終わりの途中。

あひるの空はもうすぐ終わるのだ。
終わりはもう始まり、その途中を今過ごしている。
終わりを意識したとき、気付くものがある。
なんだろう、言葉にしてしまうと、とても簡単な言葉になってしまうな。

「終わって欲しくない。」

あひるの空と15年以上の月日を過ごしてきた。
彼はたびたび休載した。
その度に、再開を待ち望み、
続きを読める瞬間を幸せに感じてきた。
彼の世界とともに、青春を過ごし、
まだあひるの空の世界がある限り、
青春を感じていられる。

3、終わりを感じたのは、今に始まったことじゃない。

週刊少年マガジンの、本誌半分より後ろ、
そこを探せば目次を見ずともあひるの空はいた。
ワンピースはジャンプの半分より手前に必ずといっていいほどいる。
あひるの空はその逆だ。

アンケートの結果が反映されると言われている週刊誌のページ配列。
あひるの空はいつも後ろ。
「打ち切りになってしまうんじゃないか」
僕らは不安を感じながら、冷や冷やしながら毎週噛み締めるようにページをめくった。
あひるの空の終わりを感じたのは、今に始まったことじゃない。

ずっと終わるかも知れない不安とともにあひるの空と一緒に生きてきた。
散りばめられたキャラクター、
それぞれの思いの結末は、
答え合わせをさせてくれ。

そんな思いの果てに、もうすぐ終わりが訪れる

4、あひるの空は、もうすぐ終わる

休載明け、
衝撃のラストシーンからの幕開け。

そう、あひるの空は、終わるのだ。
終わりを告げられ、結末も描かれた。
その結末まで、たどり着くストーリーを、
我々読者は今追いかけている。

もう終わりはすぐそこまで来ている。

今回の休載が、なんだろう、終わって欲しくないような気分でいる。
毎週のマガジンの目次ページの
「あひるの空は作者体調不良のため休載します」
の文字を見て、
1周毎に、ホッとする。
終わりが1週間伸びたような。
まだこの「続きを読みたいな」っていう感覚を継続できる。
謎の感情を抱きながら、毎週のマガジンをめくる。

早く続きは読みたいな。
でも終わって欲しくないな。

あの無音のゴール音が聞こえるようだな。

Can you feel?
Can you feel that hybrid rainbow?
ここは途中なんだって信じたい
I can feel
I can feel that hybrid rainbow.
昨日まで選ばれなかった僕らでも
明日を待ってる

ハイブリッドレインボウ / the pillowsより

bump of chickenもトリビュートアルバムでカバーしたこの曲が、

何度も降った雨のあと、架かる虹の意味。

何色かわからないその虹を、
その結末を、
明日を待ってる。